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棚橋俊夫の【後世に伝えたい精進料理講座:ごま乳】

【後世に伝えたい精進料理講座】と題しまして初回は「母の味」とも言われている「ごま乳」についてフォーカスをあて、料理方法、応用活用についてご紹介します。

写真:ごま乳

‖ごま乳とは

伝承的に、ごま豆腐を作る際に、生の白ごま(黒ごまも可能)を、擂鉢、擂り粉木で、丁寧に擂り、そして晒し木綿で濾したものが、「ごま乳」です。さらに、葛粉を加え熱を加えながら練り上げ、独特の弾力とごまの優しい風味の「ごま豆腐」が出来上がります。「ごま乳」の、出来栄えで「ごま豆腐」の味や弾力も左右しますので、とてもデリケートな作業です。なかなかご家庭では馴染みがなく、既製品のごま豆腐を安易に求めがちです。手間もかかり、擂鉢、擂り粉木も台所から今や消え失せています。しかし、この手間も暇も、実は大切な味になって、五臓六腑に染み渡ります。

ごま乳に込められた成分は、他の穀類などと比較しても、栄養価に富み、とりわけ、カルシウムは、ズバ抜けています。牛乳や豆乳に代わる重要な健康飲料と言えるでしょう。かつて、母乳に取って代わって使われていたとも聞きます。それほど、貴重な「ごまの乳」です。是非、ご家庭で気持ちを込めて、ごまを擂り、"母の味=ごま乳"を五官で感じ取ってください。きっと、ごまに秘められた計り知れない慈愛によって、身も心も癒されることでしょう。

 
‖手作り「ごま乳」の作り方
  1. 1.磨き白ごま200gを一晩水につけ、ふやかします。
  2. 2.水を切って、蒸し器で20分蒸します。
  3. 3.大きめの擂鉢にあけます。
    清らかなミネラルウオーターをカップ1杯加え、擂り粉木でひたすら円を描きながら擂ります。その際、出来るだけ姿背筋を伸ばし姿勢を整え、丹田に意識しながら、深くゆっくり深呼吸をします。辛くなったら、さらに深い呼吸を意識すれば、楽になります。
  4. 4.個人差もありますが、約20-30分擂って、一粒一粒が完全に潰れていることを確かめて、晒し木綿を用意し、漉します。真っ白な乳液が絞り出せます。これが「ごま乳」です。濃度は、水加減で調節してください。傷みやすいので、瓶などに入れ、冷蔵庫で保存しましょう。できればその日のうちに飲み干してください。
  5. 5.ごま乳は、そのまま何も加えず、冷やしても温めても、優しくふくよかな香りと味わいが楽しめます。また、お好みで、調味しても結構です。
    さらに、葛粉を加えて、練り上げれば最高のごま豆腐ができます。
  6. 6.絞りカスは、惣菜やお菓子の材料として応用できます。まさに、ごまの雪花菜(オカラ)です。

 

写真:ごま乳

‖ごま乳、ごまのおから(ごまかす)の応用
  1. ・ドリンクとしての「ごま乳」だけでなく、ここに葛粉や澱粉を加えれば、「ごま豆腐」になります。ダマができないように、葛粉などはよく溶かして混ぜ、鍋で、よく練り上げます。
  2. ・「ごまのオカラ」は、フライパンに油を多めに敷いて、よくかき混ぜながら炒めます。全体にしっかり火が入ったら、砂糖、濃口醤油で味をつけよくかき混ぜます。人参、ごぼうなども入れても良いでしょう。ご飯に、お酒に合う逸品です。
  3. ・「ごま乳」を化粧品として応用します。とりわけ、乳液としてお勧めします。また、「ごまかす(ごまのオカラ)」は、洗顔のスクラブとして、石鹸と合わせてお使いください。細かい毛穴を綺麗にして、適度の油分がしっとり感となります。天然の化粧品にこだわる方には極め付けです。但し、肌との相性には、お気をつけください。

 

注意

  1. ・ごまの種類によって、味や色が違いますので、吟味してお選びください。 残念ながら、国内で出回っているごまのほとんどが、輸入ものです。産地、栽培や加工によって、決して純粋とは言えないものが出回っていますので、気をつけなければいけません。アレルギーにも配慮がいります。
  2. ・「ごま乳」は、生ものですので、煮沸しても傷みやすく、風味が飛びやすいので、できる限りこまめにお作りください。酸化すると、大変に嫌な臭いがします。特に夏季の取り扱いには気をつけましょう。
  3. ・擂鉢、擂り粉木に代わって、フードプロセッサーなどの機械で、代用しようと思われる方が多いと思います。手間暇をかけずに安易に作ろうとする方には、本物の「ごま乳」を味わうことには無理があります。
    さらに、近い将来、大量生産のごま乳製品が出回るでしょう。精進の精神が悉く失われ、それらを安易に買うことで、皆様の心身の健康が確実に失われていきます。これを機会に、是非、意識を高めて、真に食に向き合ってみてはいかがでしょうか。体は、嘘が通用しません。また体に嘘をついたら、必ず正直にその結果を示してきます。掛け買いのない何より大切な体に、本物を届けましょう。皆様の手間暇こそ体も心も清まり喜びます。それに何より安価に出来ますよ。擂鉢と擂り粉木で、無限の喜びを体験しましょう。できる限り「買わない!」と言う選択が、無理なくできることを願っています。

  4. 指導: 精進料理人 棚橋俊夫